Research
時間分解レーザー分光測定を利用した光触媒反応メカニズムの解明
Mechanism of Phoocatalytic Reactions Studied by Time-resolved Absorption Spectroscopy
光触媒反応は半導体材料のバンドギャップを光で励起して生成した光励起電子や正孔が反応物と反応することで進行します。したがって、反応効率はこれらの光励起キャリアーの再結合失活過程や欠陥への捕捉過程、反応分子への電子移動、正孔移動過程に支配されます。我々は最新のレーザー分光装置を用いてこれらの光励起キャリアーの挙動を明らかにします。
有機太陽電池や発光素子、熱活性遅延蛍光素子のキャリアダイナミクス
Charge Carrier Dynamics of Organic Solar Cells, OLED, TADF Studied by Time-resolved Absorption & Emission
有機太陽電池や有機発光素子、熱活性遅延蛍光素子をはじめとするドナーアクセプター系デバイスの性能向上を目指して、これらの素子の内部における複雑な光励起キャリアの挙動を解明します。特に各材料の組成や界面構造の違いによってエキシトンの挙動がどのように変化するかを明らかにします。
光電極触媒反応機構の解明
Mechanism of Photoelectrochemical Reactions on Semiconductor Photoelectrodes
光電極反応のメカニズムを明らかにします。バイアス電圧を印加した際に光励起キャリアーがどのように振る舞うのか、そして電極表面に吸着した反応分子や溶媒として用いた水分子の構造がどのように変化するのかを明らかにします。このような研究を通して、どのような構造にすれば性能が向上するのか、そのメカニズムを解明します。
高性能光触媒・光電極材料の開発
Development of Highly Efficient Photocatalysts and Photoelectrodes
時間分解分光測定で得られた光励起キャリアーの挙動を基にして、より高い活性を有する光触媒や光電極材料を開発します。構造や化学組成を変えると再結合速度や反応分子への電荷移動速度、反応中間体の寿命や反応選択性がどのように変化するかを観察し、そして、定常反応活性を評価しながらより高性能な光触媒や光電極を開発します。
発光材料におけるキャリアーダイナミクスの解明
Behaviors of Photogenerated Charge Carrires on Light Emitting Materials
発光材料の性能も光励起キャリアーの再結合速度や欠陥へのトラップ過程・脱トラップ過程に支配されます。時間分解分光測定を行えば、これらの光励起キャリアーの挙動を明らかにすることができます。そして、ここで得られた知見を利用してより高性能な発光材料の開発に貢献します。
固液界面における水和殻崩壊過程の時間分解赤外分光観察
Real-Time Observation of Structural Changes of Water Molecules on Liquid/Solid Interfaces
水溶液に浸された電極や触媒の表面で起こる化学反応を理解するためには、水分子の構造変化を理解することが必要不可欠です。すべての物質は水和することで安定化しています。水との親和性が強い物質は親水性水和殻、水との親和性が低い物質は疎水性水和殻で覆われており、物質はすべてこの水和殻を通して相互作用しています。水の中で物質が互いに接近する際には、まず水和殻の構造が変化します。しかし、この変化を分光学的に調べることは非常に困難でした。我々は、電気化学システムと表面増強赤外分光法(SEIRAS)を組み合わせることで、物質どおしが接近する際の水和殻の構造変化を実時間観察することに初めて成功しました。
K+の濃度変化に誘起されるカリウムチャネル分子の構造変化
Structural Changes of KcsA Channels Induced by K+
ナトリウムが溶存した中でカリウムイオンだけを選択的に透過させる膜タンパク質分子KcsAの構造変化を電気化学系と組み合わせた表面増強赤外吸収分光法を用いて調べています。K+の濃度変化に対してKcsAの構造がどのように変化するか明らかにすることでKcsAがカリウムだけを通過させる謎を解明します。